訪問診療では脱水は非常によく遭遇する病態です。
特に高齢者では、
- 食欲低下
- 発熱
- 下痢
- 嘔吐
- 暑熱環境
などを契機に容易に脱水となります。
また、高齢者の脱水は典型的な症状に乏しく、
- 元気がない
- なんとなく反応が悪い
- 食事量が減った
- 急にせん妄になった
といった非特異的な症状で発見されることも少なくありません。
訪問診療では「脱水かもしれない」という視点を常に持つことが重要です。
水分摂取不足
# なぜ高齢者は脱水になりやすいのか
加齢に伴い、
- 口渇感の低下
- 腎臓の濃縮力低下
- 筋肉量減少による体内水分量減少
が起こります。
さらに、
- 認知症
- 寝たきり
- 嚥下障害
が加わることで脱水リスクはさらに高くなります。
# 訪問診療で多い脱水の原因
最も多い原因です。
- 認知症
- 独居
- 食欲低下
では頻繁にみられます。
- 肺炎
- 尿路感染症
- COVID-19
などで発熱や摂取不良から脱水になります。
- 下痢
- 嘔吐
による体液喪失です。
高齢者では、
- フロセミド
- アゾセミド
などによる過剰利尿も原因になります。
糖尿病患者では浸透圧利尿による脱水を生じます。
# 脱水を疑う症状
- 口渇
- 尿量減少
- 倦怠感
- 食欲低下
- 起立時ふらつき
- 頻脈
- 意識障害
- せん妄
- 血圧低下
- ショック
# 訪問診療で確認する身体所見
- 血圧
- 脈拍
- SpO₂
- 体温
を確認します。
頻脈や起立性低血圧は重要な所見です。
- 舌乾燥
- 口腔粘膜乾燥
を確認します。
皮膚ツルゴールは高齢者ではあまり信頼できませんが参考になります。
家族から
- 尿回数
- オムツ交換回数
を確認します。
脱水を示唆する所見
# 血液検査で確認する項目
訪問診療で採血可能な場合は、
- BUN
- Cr
- Na
- K
- Hb
- CRP
などを確認します。
BUN/Cr比上昇
20以上で脱水を疑います。
Na上昇
高張性脱水を示唆します。
Hb上昇
血液濃縮の可能性があります。
# まずは経口補水を考える
脱水対応の第一選択は経口補水です。
代表的な経口補水液です。
目安
500〜1500mL/日
を少量ずつ摂取してもらいます。
- 冷やす
- ゼリータイプを使用
- 少量頻回摂取
が有効です。
# 点滴が必要なケース
以下では補液を検討します。
- 経口摂取困難
- 嘔吐
- 中等度以上の脱水
- 発熱による摂取不良
# 訪問診療でよく行う補液
比較的よく使用されます。
例
ソルデム3A 500mL
2〜4時間で投与
細胞外液補充が必要な場合に使用します。
心不全
# 補液時の注意
高齢者では過剰補液にも注意が必要です。
補液で
- 呼吸苦
- 浮腫
が悪化することがあります。
体液過剰になりやすいため慎重投与が必要です。
# 入院を考慮するケース
以下の場合は在宅管理が困難です。
- 意識障害
- ショック
- 重症感染症
- 高Na血症
- 急性腎障害
# 訪問診療でよくある症例
88歳女性
3日間食事摂取不良
↓
傾眠傾向
↓
BUN/Cr比上昇
↓
補液500mL×3日
↓
改善
90歳男性
夜間不穏
↓
尿路感染症
↓
脱水合併
↓
抗菌薬+補液
↓
せん妄改善
# 家族への説明
家族には、
「高齢者では喉が渇いていても訴えないことがあります」
と説明します。
特に夏季は、
- 水分摂取量
- 尿量
- 食事量
を観察してもらうことが重要です。
# まとめ
訪問診療では脱水は非常に頻度が高く、
- 食欲低下
- せん妄
- 倦怠感
の背景に隠れていることがあります。
まず、
1. 水分摂取量
2. 尿量
3. 感染症の有無
4. 薬剤
5. バイタルサイン
を評価します。
軽症では経口補水、中等度以上では補液を検討します。
ただし高齢者では心不全や腎不全も多く、補液のし過ぎによる体液過剰にも注意が必要です。
訪問診療における脱水診療のポイントは、
「脱水を治すこと」だけでなく、「なぜ脱水になったのか」を見つけること
にあります。