訪問診療でよく出会う「せん妄」とは?原因・対応・薬の使い方をわかりやすく解説

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訪問診療では、高齢患者さんや認知症患者さんを中心に「急に様子がおかしくなった」「夜中に大声を出すようになった」「家に知らない人がいると言う」といった相談を受けることがあります。

こうした症状の背景にあるのが「せん妄」です。

せん妄は認知症と間違われることも多いですが、適切に原因を見つけて対応すれば改善することが少なくありません。

訪問診療に関わる医師が知っておきたい、せん妄の基本と実践的な対応について解説します。

認知症との違い

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# せん妄とは?

せん妄とは、

「急激に発症し、短期間のうちに変動する意識・注意障害」

です。

特徴として、

  • 昨日までは普通だったのに急に混乱する
  • 日中は落ち着いているのに夜間だけ悪化する
  • 会話がまとまらない
  • 幻覚や妄想が出現する
  • 落ち着きがなくなる

といった症状がみられます。

| 項目 | せん妄 | 認知症 |

| — | ——— | ——- |

| 発症 | 数時間~数日 | 数か月~数年 |

| 経過 | 変動する | 徐々に進行 |

| 注意力 | 著しく低下 | 比較的保たれる |

| 原因 | 身体疾患や薬剤など | 神経変性疾患 |

| 改善 | 原因治療で改善可能 | 基本的に進行性 |

認知症患者でもせん妄は発症するため、

「認知症だから仕方ない」

と判断しないことが重要です。

# 訪問診療でまず行うべきこと

せん妄を見たら、

「なぜ起こったのか?」

を考えることが最優先です。

実際には薬を出す前に原因検索を行うことが最も重要です。

# 訪問診療で多い原因

非常に頻度が高い原因です。

代表例

  • 尿路感染症
  • 肺炎
  • 胆嚢炎
  • 蜂窩織炎

高齢者では発熱が目立たず、

「なんとなく元気がない」

だけで始まることもあります。

高齢者は口渇感が低下しており、

  • 夏場
  • 発熱時
  • 食欲低下時

に脱水からせん妄を起こしやすくなります。

訪問診療では非常に多い原因です。

特に

  • オピオイド使用中
  • 寝たきり
  • 水分摂取不足

では注意が必要です。

数日排便がないだけで著明なせん妄を生じることがあります。

男性高齢者では特に重要です。

  • 前立腺肥大
  • 抗コリン薬使用

などが原因になります。

「落ち着きがない患者を導尿したら改善した」

というケースは少なくありません。

本人が痛みを訴えられない場合もあります。

確認ポイント

  • 顔をしかめる
  • 身体を触られるのを嫌がる
  • 落ち着かない

などの非言語的サインです。

  • 肺炎
  • 心不全
  • COPD増悪

などで発症します。

SpO₂測定は必須です。

訪問診療では非常に重要です。

原因となりやすい薬剤

  • ベンゾジアゼピン系睡眠薬
  • 抗不安薬
  • 抗コリン薬
  • オピオイド
  • ステロイド

まずは薬剤整理を行います。

見当識を保つ

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# せん妄治療の第一選択は非薬物療法

せん妄治療の基本は薬ではありません。

環境調整を中心とした非薬物療法が第一選択です。

複数の研究では、

非薬物介入のみでせん妄発症率を約40%以上減少させた

ことが報告されています。

# 実際に行う非薬物療法

患者さんが今の状況を理解できるよう支援します。

具体例

  • 時計を置く
  • カレンダーを見える位置に置く
  • 今日の日付を伝える
  • 定期的に声かけを行う

訪問診療では家族の存在が非常に重要です。

家族に

  • 病気による一時的な症状であること
  • 本人を否定しないこと

を説明します。

また、

  • 写真
  • 愛用品
  • いつもの毛布

など安心できる物品を活用します。

脱水はせん妄を悪化させます。

確認項目

  • 飲水量
  • 食事量
  • 体重変化

必要に応じて補液も検討します。

可能な範囲で活動してもらいます。

  • 日中は起きる
  • 椅子に座る
  • 散歩する

だけでも効果があります。

夜間の不眠はせん妄を悪化させます。

工夫として

  • 昼寝を減らす
  • 日中に日光を浴びる
  • 夜は静かな環境にする

ことが重要です。

視覚や聴覚の低下は混乱を助長します。

意外と見落とされるポイントです。

# 薬はいつ使う?

原則として、

せん妄に対して routine で薬を使うべきではありません。

以下の場合のみ検討します。

  • 転倒リスクが高い
  • 自己抜去を繰り返す
  • 暴力行為がある
  • 本人や家族の安全が保てない

場合です。

クエチアピン

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# 訪問診療で使われる薬

代表的な選択肢です。

特徴

  • 錐体外路症状が少ない
  • 高齢者でも比較的使いやすい

特に

  • パーキンソン病
  • レビー小体型認知症

では第一候補になります。

幻覚や妄想が強い場合に有効です。

ただし

  • パーキンソン病
  • レビー小体型認知症

では注意が必要です。

鎮静作用が比較的強く、夜間の興奮が強い場合に使用されます。

# ベンゾジアゼピンは基本的に避ける

訪問診療でよく見かける誤りが、

「興奮しているから睡眠薬を増やす」

ことです。

ベンゾジアゼピン系薬剤は、

  • 転倒
  • ふらつき
  • せん妄悪化

を引き起こすことがあります。

例外的に使用するのは

  • アルコール離脱
  • ベンゾジアゼピン離脱
  • けいれん
  • 終末期せん妄

などです。

# 終末期せん妄への対応

終末期では完全な改善が難しい場合があります。

この場合は、

  • 苦痛の緩和
  • 安全確保
  • 家族支援

が中心になります。

家族へ

「脳機能の低下に伴う自然な経過として起こることがあります」

と説明し、不安を軽減することも重要です。

まとめ

# まとめ

訪問診療におけるせん妄対応で最も重要なのは、

「まず原因を探す」

ことです。

特に

  • 感染症
  • 脱水
  • 便秘
  • 尿閉
  • 疼痛
  • 低酸素
  • 薬剤

は必ず確認しましょう。

また、

治療の中心は非薬物療法です。

環境調整や家族支援だけでも改善することは多く、薬物療法は安全確保が困難な場合に限定して使用します。

訪問診療では「薬で抑える」のではなく、「原因を治し、安心できる環境を整える」ことがせん妄診療の基本です。