訪問診療では、
- 「足がむくんできた」
- 「靴が履けなくなった」
- 「体重が増えている」
- 「最近息切れがする」
といった相談を受けることがあります。
浮腫(むくみ)は高齢者では非常に頻度が高い症状ですが、その原因はさまざまです。
特に訪問診療では、
「とりあえず利尿薬を増やす」
のではなく、
「なぜ浮腫が起きているのか」を見極めること
が重要です。
疑うポイント
# 浮腫をみたら最初に確認すること
まず確認したいのは、
急性か慢性か
- 数日で急に悪化した
- 数か月かけて徐々に進行した
片側か両側か
- 片足だけ
- 両足とも
呼吸苦があるか
- 労作時息切れ
- 起坐呼吸
- 夜間呼吸苦
体重変化
- 数日で2〜3kg増加
は体液貯留を疑います。
# 浮腫の原因を考える
訪問診療では以下の順で考えると整理しやすくなります。
# ① 心不全
最も重要な原因です。
- 両下肢浮腫
- 体重増加
- 呼吸苦
- 起坐呼吸
- 頸静脈怒張
「足がむくんできた」
↓
実は心不全増悪
↓
数日後に呼吸不全
ということがあります。
採血可能なら
- BNP
- NT-proBNP
が参考になります。
# ② 腎機能低下
腎不全では水分や塩分が排泄できなくなります。
- Cr上昇
- 尿量減少
- 全身浮腫
# ③ 低栄養・低アルブミン血症
訪問診療では非常に多い原因です。
- 食事摂取量低下
- がん終末期
- フレイル
- Alb
- TP
を確認します。
# ④ 下肢静脈うっ滞
訪問診療で非常に多い原因です。
- 両側性
- 長時間座位
- 車椅子生活
- 日中悪化
- 下肢挙上
- 弾性ストッキング
- 運動
が中心です。
利尿薬は効かないことが多くあります。
特徴
# ⑤ 深部静脈血栓症(DVT)
見逃してはいけない原因です。
- 片足のみ
- 急激な腫脹
- 疼痛
- 発赤
肺塞栓の原因になるため注意が必要です。
# ⑥ 薬剤性浮腫
訪問診療で非常に重要です。
Ca拮抗薬
代表例
- アムロジピン
- ニフェジピン
NSAIDs
- ロキソニン
- セレコキシブ
ステロイド
ピオグリタゾン
糖尿病患者で注意します。
# 訪問診療での評価手順
浮腫の範囲を確認
- 足首のみ
- 下腿全体
- 大腿まで
- 全身
圧痕性浮腫か確認
指で5秒押してへこむか確認します。
呼吸状態確認
- SpO₂
- 呼吸数
- 呼吸苦
体重測定
訪問診療では最も有用な指標の一つです。
# 実際の治療
フロセミド
代表的なループ利尿薬です。
例
フロセミド20mg 1日1回
注意
開始後は
- 体重
- 血圧
- Cr
- K
を確認します。
# 下肢静脈うっ滞の場合
利尿薬よりも
- 下肢挙上
- 弾性ストッキング
- 歩行
が重要です。
よくある例
# 低栄養の場合
栄養改善が治療になります。
利尿薬だけでは改善しません。
# 薬剤性の場合
原因薬剤を中止・減量します。
アムロジピン10mg
↓
著明な浮腫
↓
減量またはARBへ変更
↓
改善
# 在宅で緊急性が高いケース
以下では入院も含め検討します。
# 家族への説明
家族には、
「浮腫=水分の摂り過ぎ」
とは限らないことを説明します。
実際には、
- 心不全
- 腎不全
- 低栄養
- 薬剤
などが原因であることが多くあります。
# 訪問診療で覚えておきたい浮腫の鑑別
両側浮腫
- 心不全
- 腎不全
- 低アルブミン
- 静脈うっ滞
- 薬剤性
片側浮腫
- 深部静脈血栓症
- 蜂窩織炎
- リンパ浮腫
# まとめ
訪問診療で浮腫をみたら、
まず
1. 片側か両側か
2. 呼吸苦の有無
3. 体重増加
4. 薬剤
5. 栄養状態
を確認します。
特に高齢者では、
- 心不全
- 静脈うっ滞
- 低栄養
- 薬剤性浮腫
が多くみられます。
浮腫の治療は利尿薬だけではなく、
原因を見極めて対応することが最も重要です。
訪問診療では「むくみを取る」ことよりも、「なぜむくんだのか」を考える姿勢が診療の質を大きく左右します。